2009年11月15日

人材流出は避けられんなあ

先日の仕分けによる次世代スパコン凍結の余波で、計算機科学者やシミュレーション研究者のみならず、生化学系の研究者にまで余波が及んでいる。これはもう人材流出の流れがどんどん加速するだけだな。
HPC Wireには早速こんなこと書かれているし。
Japan's Freeze on Supercomputers Marks End of Era
Japan may freeze spending on supercomputers, dealing a blow to a crippled sector and threatening brain drain in a country that prides itself on technological prowess.



次世代スパコンだけでなく、基礎科学系の予算が端から削られているのも原因の一つ。
もともと科学の予算というのはその大半が人件費と設備費だ。予算が削られると即座に人件費に跳ね返る。
大「脳」洋航海記で以下のように書いていたが、かなり同感。
「事業仕分け」中間報告:若手支援は切り捨ての方向に向かい、最悪のシナリオが一歩現実味を帯びた
しかしながら、今日の「事業仕分け」が下した結論はハードランディングを誘発させればいい、というものでした。

もちろん、あえてハードランディングという選択肢を採るという考え方もあります。でも、本当に基礎科学研究を推進した方が良いと思うのであれば、そこには具体的にどのようにハードランディングさせるかというところまでトップダウン的にきちんと計画し、そこに落とし込む必要があるはずです。にもかかわらず、今日の裁定は「とりあえず大学と研究機関の首を締め上げれば勝手に改革するだろう」という、ある意味で楽観的で、またある意味ではかなり無責任なものとなっています。

昨日のエントリで指摘した通り、「勝手に改革が進む」なんてことは現在のアカデミアの体制ではほとんどあり得ない話です。費用が減らされるなら、それは大抵の場合既にテニュアの地位にあるPIの持分からではなく、任期制(ノンテニュア)の若手研究者の持分から、ということになります。人件費が減らされるのなら、それはテニュアの地位にあるPIではなく、任期制の若手研究者のクビが飛ぶということを意味します。

そして今回は、総枠という観点からですが事実上科研費若手A-Bも減額されることが確実視されています。議論を見る限りでは、今後若手支援で推進されるのはおそらくテニュア(トラック)制度の新設・維持に関する予算ぐらいで、残りは基本的には「非効率」のレッテルを貼られて漸次プレゼンスを失っていくことになるでしょう。そうなれば、若手はドロップアウトして表舞台から消えていくか、さもなくばもっと待遇と環境の良い海外へと逃げ散っていってしまうか、ともかく日本から姿を消してしまうはずです。


日本の科学界が何分野か失血死しかねんな。
特に人材も予算も薄い基礎科学のいくつかの分野で。
posted by 黒影 at 19:46| Comment(5) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
> 特に人材も予算も薄い基礎科学のいくつかの分野で。
なんか呼ばれたような気がしたので。うちの分野も次世代スパコン関係のプロジェクトがいくつも準備中だっただけに、それなりに大変なことになりそうな予感。当事者ではないので詳しくはわかりませんが。

でも、人材流出というけど、近くに装置もなくて活発に研究している若手もいなくなると、人材は流出ではなく消滅する気がします。将来計画のない分野には新しい世代にアピールする力も失うので、結果的に人材そのものがいなくなると思います。流出出来る人材がいるだけまだましか、と。
Posted by くろん at 2009年11月17日 19:19
>くろん さん
関西の関連業界では理研のみならず周辺大学でも次世代スパコンを前提にしたプロジェクトが軒並みつぶれてお通夜みたいな感じです。

>でも、人材流出というけど、近くに装置もなくて活発に研究している若手もいなくなると、人材は流出ではなく消滅する気がします。
これは確かに、流出よりも流失の方が多いでしょうね…
Posted by 黒影 at 2009年11月18日 18:54
"その当時"お金にならないと思われていた基礎研究がその後大ブレイクした歴史は無視されているんですかねぇ。
悲しいなぁ。
原生動物の研究とか真っ先に切られそうですね。
テロメアとかリボザイムとかいろいろ貢献してるんだけどなぁ。
分類学とか系統学とかもこのままでは風前の灯火ですね。
モデル生物だけがせいぶつじゃない!と声を大にしていいたい。
Posted by modoki at 2009年11月23日 21:19
理工系で留学してる知人が数人いますが、揃って帰国せずに向こうで仕事探すと言っておりました。
無理もないと思わざるを得ないのが悲しいところです。
Posted by しがない電話屋 at 2009年11月24日 21:31
超今更なのですが・・。
当方、素人趣味ではありますが元々PC関連の情報をよく読む関係から
近頃の次世代スーパーコンピュータに関する話題を眺めおりましたが、
撤退に近い中止から鶴・・じゃなかった鳩の一声でw復活したようですね。
ただし見直しは行うと・・まぁそこはそれなりの理由があって計画に注文を
付けたはずでしょうから当然やらざるを得ないでしょう。

この話、システムを作る側、使う側で状況が違い、また語られる内容が
変わってくるのでしょうが、毎度の如くゴッチャ煮状態ですね・・。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B1%8E%E7%94%A8%E4%BA%AC%E9%80%9F%E8%A8%88%E7%AE%97%E6%A9%9F

唐突ですが、主に作る側に対して、一個人の勝手暴論を書かせたいただきたいと思います。
やはりかかる費用が(恐らく将来完成時期の演算単価を考えても)高すぎるのだろうと・・。

今年になってNECが撤退した事によりCPUをベクトル/スカラ混合型からスカラ単独型に
変更するに至っており、その意味ではIBMやCrayのスパコンに近いシステムとなります。
日本の次世代スパコンに使われる予定のCPU「SPARC64 VIII fx」は現時点で世界最速との
評価ですが、残念ながら今のところ次世代スパコン以外には市場性が無く、生産規模の
違いからもIntelやAMDの汎用CPUに価格(演算単価)では遙かに及ばないだろうと思われます。

さらに地球シミュレータ等、これまで日本が得意としてきたベクトル型システムで
培われてきたソフト資産はスカラ型に変更する事によりほぼ使えなくなると思われ、
そういう意味でも同じスカラ型であり尚かつ汎用のCPUを使用したスパコンと単純に
比較されると、下手をすると導入コストで0が一つ二つレベルの差が出ると思います。

また、さらに残念な事ですがこれら各部品、システムの製造、構築のノウハウは
事実上その後の商品化の可能性がほぼ無い事を考えると、総額1200億円超という
コストを払ってもまだ各製造メーカーにとっては赤字となる可能性が高く、事実
その為にNECはこのプロジェクトは撤退したと言えます。

残念ながら今のところ日本のスパコンには現在or将来に対する市場性が見いだせない
≒持続性、発展性が殆ど無い為、このままでは作ったところでプロジェクトは解散・・
に近い形となる可能性が高いと思います。これでは技術の継承などととても語れません。

スパコンレベルになると単純比較できないor基礎研究をコストで計るのは不適当との
意見も非常によくわかるのですが、それにしてもやはりお金は有限でありモノには限度と
いうものがあるはずです。現行のままでは下手しなくても性能単価で市場価格の10倍は
しそうで、それでいて余所では(価格or市場)競争力の無いガラパゴス状態なシステムです。

遅くなりましたが、私は研究者じゃありませんが一国民の意見としては是非とももっと
速いスパコンは作るべきと思っています。私如き素人にでもまだまだ速い計算機を必要と
する領域は沢山ある事は判ります。少々値段が高いからといってALL-OR-NOTHINGでじゃあ
止めるなどと言うのは大反対です。しかし、やはり元の計画は良くないとも思っています。

正直、今回は議論をしても結局大して変わらないだろうという暗い想像がありますが、
せめて次からでも汎用CPUを使うなりしたもっと安いシステムを組むべきと思っています。
今の状態は皆にとって不幸な護送船団方式と見えます。イグアナは余所じゃ生きられないです。
浮いた分を研究者にお金が回せたら、もっと有効に使えるはず・・安っぽい理想論ですが。

完全に空気読まずな長文申し訳ありません・・。
Posted by カルチャーショッカー at 2009年12月13日 02:31
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