2005年04月26日

ブログの匿名論2 How to Blog Safety (EFF)

前エントリで紹介したBaileyの文章は、EFFが今月初めに出した
「Blogによって不利益をこうむる事を防ぐために匿名ブログを薦める文章」に対する批判である。
この文章は欧米のブログ界でかなりの影響力を持つ組織が出した文章であり、日本でも日経BPが取り上げている。
後半の法律論の部分はアメリカの事例であるため日本ではそのまま参考にするわけには行かないが
非常に良く出来た文章なのでブログによるデメリットを回避するためのヒントにはなると思う。
そこで全文を訳してみた。 
 
 
いかに安全にブログを運営するか(仕事やその他色々に関して)

ブログは新聞と個人の電話の混ざったような存在だ。あなたの大好きなチョコレートムースのレシピを友人と共有するための、あるいは堕落した官僚があなたのボスに賄賂を渡していることを市民に知らせて民主主義の基本的信条を支えるための完璧なツールである。

あなたがブログを始めたとしても、あなたが数千の読者を惹きつけるという保証はない。
しかし少なくとも2、3人の読者はあなたのブログを見つける。そして彼等は少なくともあなたが求めた、あるいは望んだ読者だ。
その中には潜在的にあなたの現在の雇い主や同僚、隣人、配偶者や恋人、家族、そしてGoogleやFeedsterにあなたの名前やeメールアドレス、ハンドルネームを入力して2,3のリンクをクリックするに十分な好奇心を持った人たちが含まれる。

肝心なことは、あなたの本当のアイデンティティが何らかの形でブログに結びついているならば、
誰でもいずれはあなたのブログを見つけることができるということだ。
そしてこんな結果を引き起こすかもしれない。
あなたの家族はあなたの考えを読んだときにショックを受けたり狼狽するかもしれない。
あなたのボスになるかもしれない人はあなたを雇うことを考え直すかもしれない。
しかしこれらの懸念があなたの執筆活動を止めることになってはならない。
そうならないように、ブログを個人専用のままにしておくか、信頼できる人間だけがアクセスできるようにしておくよう促さなければならない。

我々はここにあなたが不当な報復に直面することなく自己表現が出来るように、プライバシーを制御維持するためのいくつかの単純な予防措置を提供する。
これらの予防措置を正しく続けたならば、あなたを友人や同僚の前で困難に陥ることから救うことが可能だ。

匿名でブログを書く
ブログを書きつつプライバシーを守る最善の方法は、匿名でブログを書くことだ。
しかし匿名であることはおそらくあなたが考える以上に難しい。

あなたが自分のひどい仕事環境についてブログを始めたいとする。しかしあなたはボスや同僚が自分たちのことを書かれていると発見する危険を冒したくはないとしよう。
あなたは可能な限り自分の状況の詳細を隠す方法を考えたいと思うだろう。
そしてブログからあなたを突き止めることを難しくする技術を使いたいはずだ。

1.偽名を使用し、個人を特定できる情報を明かさない。
自分の職場について書くときは詳細を明かさないよう気をつける。職場がどこにあるか、どれくらいの従業員数か、どんな種類のビジネスを行っているかなど。一般的な詳細でさえ多くの情報を与える。例えば、もしあなたが「私はシアトルのある週刊紙で働いている」と書いた場合、あなたの職場は2箇所のうちどちらか一方なのは明らかだ。
だから賢くなろう。代わりに小規模都市のメディアアウトレットで働いていると書くのもいい。
絶対に本名や自分の写真を使用してはいけない。そして本名に近い偽名も使ってはいけない―例えば「アナリー」を匿名化して「リアン」などとしてはいけない。そしてどんな類いの個人情報でもあなたのアイデンティティにつながることを忘れてはいけない。―あなたは職場で唯一特定の誕生日の、あるいはオレンジぶち猫を飼っている人間かもしれない。
また、例えばあなたが同僚にブログを知られることを心配するなら、職場で仕事中にブログの更新をしてはいけない。
ブログを維持するためにインターネット接続のような会社のリソースを利用すると困ったことになるかもしれない。ブログを仕事関連の活動であると主張することは非常に困難だ。そしてオフィス仲間やオフィスのネットワークを監視するITオペレーターからブログ活動を隠すことはさらにずっと難しい。

2.匿名化技術を利用する
匿名性を保ちたいブロガーのための技術的な解決策はいくつも存在する。
Invisiblog.comは、無料で匿名ブログを提供するサービスだ。あなたはここで実名を記入することなくブログを作ることが可能だ。サービス提供者でさえあなたの名前に触れることは無い。
ブログサービスがユニークIPとどんなコンピューターからアクセスしているかを記録していることが心配ならば、ブログの編集に匿名ネットワーク"Tor"を利用することが可能だ。
Torはインターネットトラフィックを「オーバーレイネットワーク」と呼ばれるルートに通すことであなたのIPアドレスを隠す。さらに重要なことに、Torはネット上のスパイがデータの通る経路を辿ってあなたにたどり着くことを難しくしてくれる。
(Tor:匿名でのネット閲覧、SOCKSをサポートするシステム。詳細はこちらのサイトをご覧下さい。)

もっとユーザーにやさしいツールを求める人にはAnonymizer.comが"Anonymous Surfing"という製品を提供している。このソフトはインターネットトラフィックを匿名サーバーに通すことでブログを提供するサービス会社からあなたのIPを隠すことが出来る。

3.読者を限定する
多くのブログサービス(LiveJournalを含む)では、個々の投稿やブログ全体に対しパスワードを持つ人間やあなたが友人と認定した人間のみに公開されるように設定することが可能である。もしあなたのブログの主な目的が友人や家族と対話することであり、プライバシーに関するどんな副次的ダメージも避けたいと思うのであればこのような機能の利用を考えるべきだ。

4.検索エンジンで検索不可能にする
もしGoogleのような多くの検索エンジンの検索結果に自分のブログが含まれることを避けたいのであれば、特殊なファイルを作成することにより検索エンジンにブログを無視させることが可能だ。
このファイルは"robots.txt"あるいは"ロボットテキストファイル"とよばれている。
また、このファイルを使用することによりブログの特定箇所にのみ検索エンジンのアクセスを排除することも可能だ。
ファイルの作り方が分からない場合、Web Tool Central"ロボットテキストファイル生成スクリプト"を使うといいだろう。

解雇されること無くブログを書く
一部のブロガーは、彼らの趣味の活動が失業につながるかもしれない事を最近発見した。
複数の評価者によると、既に何十人もの人々がブログを書いたことにより解雇されており、この数字は現在も増加中とのことである。

悪いことに、多くの場合ブログによって首になると法的な補償手段が存在しない。言論の自由に対する権利は合衆国憲法修正第一条によって保護されているが、この保護は言論活動の結果からあなたを保護してくれはしない。
合衆国憲法修正第一条は政府による検閲から言論を保護している。個人的な集団(例えば大部分の雇い主)による検閲は規定されていない。カリフォルニアのような「自由な」雇用法を持つ州では、雇い主はどんな理由であろうといつでも自由に労働者を解雇することが可能だ。そしてブロガーを特別に差別から保護する法律はどの州にも存在しない。

間違いなくブログが解雇通知をもたらさないようにする方法の一つは、特定の保護された話題だけを扱うようによく気をつけることだ。
例えば大部分の州には、仕事の外で政治について公然と語る人間を雇い主が解雇することを禁止する法律が存在する。ただしこのような法律は州によって大きく異なることに注意する必要がある。そして多くの法律はブログに関してまだ試されていないのだ。

1.政治的意見
カリフォルニアを含む多くの州の労働法規には、雇い主が従業員の政治活動を制限したり解雇をちらつかせて従業員の政治活動に影響を与えたりすることを禁ずる部分が含まれている。もしあなたが自由党に所属していることをブログに書いたことによって解雇されたのであれば、あなたは訴訟で非常に有利な立場に立つことが出来るだろう。

2.組合運動
多くの州では労働組合を組織することについて話したり書いたりすることは法の強い保護を受けている。よって労働運動についてブログを書くことは安全であると考えられる。
また、あなたが組合に所属している場合、契約内容にブログをどのように許可するかについて扱われている可能性がある。

3.内部告発
公益に反する雇い主の活動を暴露する人々、すなわち内部告発者はしばしば法による保護を受ける。多くの人々は、ブログで雇い主の規定違反(例えば有害物質の排出規制)や違法行為を報告した時に保護を受けられると誤解している。しかしそうではない。
あなたはまず適切な調整機関、法的機関に問題を報告する必要がある。
また、会社のマネージャーに文句を言うことも出来る。しかしまず最初に責任者に対してあなたの会社が湿地に捨てているヘドロを報告し、それからブログに書くべきだ。

4.公的機関で働いている場合
あなたが公的機関で働いている場合、オフィスで何が起こっているかブログに書くことは合衆国憲法修正第一条の下に保護されている。市民は納税者であるため、あなたのブログは行政でなにが起きているかを知るための公的関心の対象となる。
なお、当然だが機密情報や秘密情報を漏らしてはいけない。

5.合法的な勤務外の活動
いくつかの州には従業員や就職希望者の合法的な勤務外のブログ活動を保護する可能性のある法律が存在する。
特に勤務外の言論活動に関して雇い主が不当に制限的な方針を設けている場合は。
例えばカリフォルニアには従業員を「職場を離れ、職務時間以外に起こった合法的な行為によって降格、昇進停止、解雇すること」から保護する法律が存在している。ただしこれらの法律はブログ活動に関しては試されたことが無い。
もしもあなたが勤務外のブログ活動によって解雇されるのであれば、どんな権利を持っているか知るために弁護士に連絡をとるべきだ。

ブログを恐れることはない
ブログは最近多くの関心を集めている。これまでは不可能だっとしても、もはやオフライン生活で関係する人々があなたのブログを知らないと仮定することは出来ない。
新しいRSSツールとサービスは、ブログエントリを探したり集計したりがこれまで以上に簡単になったことを意味する。
しかし匿名で―そして仕事に安全な方法で―ブログを書いている限り、オンラインでのあなたの発言があなたを傷つけるようなことは起こりそうにない。

リソース
C|Net's guide to workplace blogging: http://news.com.com/FAQ+Blogging+on+the+job/2100-1030_3-5597010.html?tag=nefd.ac

How Tor works: http://tor.eff.org/overview.html

Anonymizer's Anonymous Surfing: http://www.anonymizer.com/anonymizer2005/1.5/

A list of fired bloggers: http://morphemetales.blogspot.com/2004/12/statistics-on-fired-bloggers.html

The Bloggers' Rights Blog: http://rights.journalspace.com/
posted by 黒影 at 06:32| Comment(1) | TrackBack(10) | ネット雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
厳しいんですね・・・
Posted by よpし at 2007年04月17日 09:57
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